第2章 審神者見習い
「あー、もう」
鶴丸国永は半ば投げやりなりつつ、男の肩を掴んで距離を空けた。
急に引き剥がされたことできょとんとする男をほって、瞼に、額に、頬に、唇の端に、顳顬に。キスの雨を降らせる。
それを甘受する男に気を良くした鶴丸国永は、さらに顎から鎖骨にかけてキスを何度か落とし、最後に仕上げとばかりにその肌をきつく吸った。
「んぁ…」
小さく男があえぐ。
鶴丸国永は自身に言い聞かせながらブレーキをかけ、しっかり鬱血痕が着いたのを確認すると、指でなぞった。
理性がある時ならば「見えるとこに付けんな!」と蹴ってくる男も、理性のない時はむしろそれを見て嬉しそうにするのだ。
「つる」
こどもの様なあどけない声で男は呼ぶ。
「ん?」
鶴丸国永が優しく先を促せば、いつもに増してゆるゆるの表情筋を綻ばせ、ふにゃんと笑った。かわいすぎか。
心中で悶えている鶴丸国永をよそに、男はぷつんと紐が切れたように鶴丸国永の胸に頭を預け眠ってしまった。
「…おい、主」
まさか急に寝るとは思ってなかったので、少し驚いて声をかける。
しかし男はもにょもにょと口を動かすだけで、はっきりとした言葉を返すことはない。
こりゃだめだな、と判断した鶴丸国永はもう一度声をかけて肩を揺する。
「あるじ、寝るなら部屋に行こう」
すると男は小さく唸ったあと、おんぶ、と子供のように強請った。
「いいのか?見習いに見られても」
一応男の矜持のためにと尋ねれば、男は目を擦りながらふるふると頭をふる。
よくない、ということらしい。
どうしたもんかねぇ、と鶴丸国永は途方にくれた。