第2章 審神者見習い
「なあ、つる」
男が強請る。
しかし、鶴丸国永は眉を下げて微笑むばかり。
「主、きみの中にはまだ俺の神気がかなり濃く残ってる。だからまだダメだ」
「やだ」
「こーら、やだじゃないだろう」
まるで小さい子に言い聞かせるように宥める鶴丸国永に、けれど男は納得いかなくてきゅっと彼の着流しを掴んだ。
「なんで…」
「あーるーじー」
「…鶴丸はおれのなのに、なんでがまんしなきゃだめなの」
ぽそぽそと、男はそんな言葉を口にした。
それをしっかり聞いてしまった鶴丸国永からしてみれば、勘弁してくれ!!!と叫び出したい心境である。
こちとらさっきから必死に我慢しているというのに、何なんだこの男は。
普段はそんなこと言わないくせに、こういう時に限ってそういう煽るようなことをいうだろう。小悪魔にも程があるぜ。
鶴丸国永は頭の中で三日月宗近を思い浮かべて、なんとか自身の理性をつなぐ。
その間にも男は鶴丸国永の首筋に顔を寄せ、すんすんと鼻を鳴らしている。
それがどうにも恥ずかしくて、鶴丸国永は赤くなる己の顔を嫌でも自覚した。