第2章 審神者見習い
一方、男はと言うと、三日月宗近の言う通り中庭を見渡せる縁側にいた。
隣にはあまり距離をあけずに鶴丸国永が座っており、その近さと濃い空気感からふたりのキョリが伺える。
景趣は秋。
夜になり、ライトアップされたことでより幻想的な雰囲気を醸し出す紅葉が、どこか妖艶に思えた。
男はなんとなくキスしたい衝動に駆られて、誘うように指に鶴丸国永の髪を絡ませる。
ふわふわで猫っ毛、細くて一本一本をよく見るとそれは白というより透明に近い。
するりと手から抜けていく髪を、くるくると巻きつけることで阻止する。
くすくすと鶴丸国永が小さく肩を揺らした。
そんな彼を見て、男はぽう、と、どこか夢心地になる。地に足がついていないようだ。
鶴丸国永の機嫌は、すっかり元通り。を通り越して上機嫌である。
「つる」
男が、甘えるようにつたない声で呼ぶ。
鶴丸国永はそれに応えるように、男の右耳のふちをなぞってから、やわやわと耳たぶを揉んだ。
身体を甘い痺れが走って、男は熱の籠った息を吐く。
「きす、したい」
熱に浮かされた瞳で、男は自分の要望を口にした。
もう三日間も口にしてもらってない。
三日という時間は、男にとってずっとに値する程長く感じた。