第12章 硝煙
「話を戻すぞ。今回おれがお前の本丸に来たのは、偶然だった」
「そうなんすか?」
「一度政府の方で会ったのを覚えてるか?」
「あぁ…俺が見習いを迎えに行った日ですよね」
「そうだ。おれはあの日、他の本丸へ政府からの要請で向かうところだった。確かそこも乗っ取りだったはずだ。でまぁ、無事に解決したと思ったら、政府から審神者見習い柚子を調べて欲しいとの依頼が来た」
「あの、」
「なんだ?」
「そういうのって、政府がするんじゃ?」
「政府は政府で忙しいからなぁ。それに、彼女を調べていくうちに時空を超えねぇといけない事態になった。そうしなけりゃ彼女の素性が分からんかったからな。そうなると刀剣男士を使わにゃならんくなる。ある一定以上の力を持ち、尚且つ例外に慣れている刀剣男士をな」
「あ、それで…?」
「そうだ。俺みたいに政府に手を貸し、任務についている審神者は他にもいる。といっても数えられる程度だが。それぞれ担当の管轄が決まってるのは知ってるか?」
男は白城の問いかけに首を振る。
「公にはしとらんからな、しょうがないが、知っておいて損はないだろう。おれは基本的に審神者見習いの本丸実習を担当してる。他で有名なのはブラック本丸担当だとか、演練担当だとかだ」
「へー…」
「とまぁそれは一旦置いといてだ。調べていくうちに彼女の正体が判明した。同時に、彼女が今どの本丸に配属されてるのか、なにを目的として動いているのかもな」
「調べていくうちに…、って、柚子ちゃんの情報は政府でもある程度は知っているはずですよね?それが真実かはともかく。何も教えられなかったんですか?」
「そういう決まりなんだ。誤解されがちだから言っておくが、政府の役人は皆一生懸命やってくれてる。すべてがそうだとは言わんが基本的に善人であるし、審神者とは違う大変さがある。だからなんだ、あまりきつく当たらないでやってくれ」
「…はい」