第12章 硝煙
「それで、今回のことなんだが」
そう切り出した白城に、男は頷いて続きを促す。
「実はこういうことは、少し前からあったんだ。お前さんみたいなパターンはまぁ珍しいんだが、多いのは乗っ取りとかだな」
「乗っ取り…、本丸を?」
「ああ。逆に見習いが被害に遭う場合も多い。セクハラだったり、パワハラだったり。そういうので多いのは、若い女の子の見習いが多いな」
「なんていうか、…どこ行っても変わんないすね」
「そうさな…、人間の性といっちゃあ語弊があるが、なくなりはしねぇだろう。それでも、刀剣男士ってのは基本的に人間のことが好きで、慈悲深い生きものだから、こうして力を貸してくれる。人の身を得て、どうしたっておれたちと同じように思っちまうが、あいつらが神様であることを忘れちゃいかんよな」
「……そう、すね」
白城の言葉に、脳裏をよぎったのは男と鶴丸国永の関係だった。
果たして、自分の抱いた想いは正しいものだったのだろうか。
いつか必ず終わりがくる関係だ。
この戦が終わった時、彼らは役目を終え本霊の元へと帰っていく。それが数年後なのか、はたまた百年後なのかは分からない。
それでも、例えば結婚して子をなし、その子がさらに子をなし。
そういう、所謂ふつうの目に見える永遠というのは、鶴丸国永を好きでいる限りずっと手に入らない。
そう、今、痛感した。