第2章 審神者見習い
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午後六時を過ぎた頃、本丸へと帰ってきた三人が席に着くと宴は始まった。
「えー、ごほん。では、審神者見習いの柚子ちゃんを歓迎して、カンパーイ!」
「「「カンパーイ!!!」」」
がちゃん、がちん、とグラス同士のぶつかる音と、それから飲み干す音、最後に刀剣男士たちのぷはーっという声で幕は開けた。
机の上にはこれでもかと言う程料理がずらりと並べられ、そのどれもが食欲をそそるものばかりだ。
男の隣には山姥切国広と柚子が座っており、他の面々はお菜にがっつきながらもちらちらとこっちを気にしているのが伝わってくる。
男は山菜の天ぷらを頬張りながら、ちらりと隣を盗み見た。
隣の柚子はというと、手に小皿とお箸を持ったまま目をキラキラと輝かせている。
小皿が汚れてないことから、まだ何も口にしてないことが分かる。
男はそんな様子の柚子に思わず吹き出して、柚子へと話しかけた。
「どうした?遠慮しなくていいんだぞ」
すると漸く我に返ったらしい柚子は、はっとして慌てて手を振る。
「いえ!あの…!どれも美味しそうで選べなくて…!」
「あははっ、何から食べるか決めれなくて固まってたのか」
「はい…、恥ずかしながら……」
「柚子ちゃんかわいーね」
男が素直に感想を口にすれば、柚子は顔の前でぶんぶんと手を振る。照れからか顔が赤いのもかわいい。
面白い子だなぁ、と思いながら、男は適当に唐揚げやらポテトサラダやらを小皿によそって、それを柚子へと手渡した。