第12章 硝煙
久しぶりの本丸で全員揃っての朝餉は、それはもう賑やかだった。
そしてその賑やかさは、男をどこまでも安心させた。
ようやく本当に帰ってきたのだと実感する。
誰一人かけることなく、そこには男が望んだ光景が広がっていた。
朝餉を食べる合掌の前に、乱藤四郎が「あー、待って待って!」と男を止める。
キョトンとする男をよそに、乱藤四郎は咳払いを一つ。
全員からの視線を一身に受け、なんだなんだと構える男に乱藤四郎は満面の笑みを浮かべた。
『主、おかえり』
声を揃えて言われた言葉に、男は思わず泣いた。
帰ってきた。帰ってきたのだ。やっと、本当に。
愛しいと思う。彼ら刀剣男士を、この居場所を。
諦めないで良かったと、心底思う。
うぅー、と泣き出した男に、それぞれが声をかけていく。
お陰で涙はちっとも止まりそうにない。
泣いてぐしゅぐしゅになりながらも朝餉を平らげると、へし切長谷部が本日の予定を読み上げた。
めちゃくちゃ張り切っているように見えるのは、気のせいなんかではないだろう。
和泉守兼定が男にこそっと耳打ちして教えてくれた。
「長谷部のヤロー、主を支えるのは俺だって張り切ってやんの。主がいねぇーときはそりゃあもう辛気臭ぇのなんのって」「聞こえてるぞ和泉守!」こんな具合で堀川国広に怒られるまでがワンセットだ。