第12章 硝煙
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ゴホン、という蜂須賀虎徹の咳払いとほぼ同時、男の頭を山姥切国広が叩いた。
ニヤニヤとこちらを見る白城を見て、咄嗟に鶴丸国永から離れた男に、山姥切国広は「シャキッとしろ」とジト目でこちらを睨む。
例えどんな理由があろうと、他の審神者がいる場所であまりに長い抱擁は、ちょっとよろしくない。
山姥切国広は今の抱擁がどう言ったものか分かっていても、わざとそうした。
とりあえずと柚子の遺体を空き部屋に移したところで、鶴丸国永と蜂須賀虎徹、更に白城が用意した式二体は阿津賀志山へ行くため、ゲートをくぐった。
ちなみに詳しい場所は蜂須賀虎徹が把握しているということで、その辺りは任せてある。
二振りと二体が阿津賀志山へ向かっている間、男は白城に言われて少しばかり仮眠をとることにした。
本当は起きて二振りの帰還を待とうと思っていたのだが、初期刀である山姥切国広に寝ろと無理矢理布団に突っ込まれたため、すぐに諦めた。
心配されていると分かると余計に断りづらいものだ。
白城も疲れているだろうに、客人であるにも関わらず、起きて待っているという。
仮眠と言いつつがっつり寝てしまいそうだと零せば、おれが叩き起こしてやるから安心せぇ、と言われた。
山姥切国広も休みはするが寝ないというので、男のわがままで男のそばで休むように頼み込んだ。