第12章 硝煙
けれど、その心配要素を取り除いたとしても、男は何故か素直に頷くことはできなかった。
渋々頷きはしたが、本音を言うと行って欲しくない。
自分勝手だとは分かっているが、今はどうしてかそばにいたいと思った。離れたくないと思った。
けれど、柚子との約束を守りたいという鶴丸国永の想いだって理解しているし、自分がその立場ならそうしたはずだ。
男はぐっと本音を呑み込んで、もう一度柚子を一瞥した。
「……分かった。許可する」
「!ありがとう、主」
「お守りは?」
「この通り。ちゃんと持ってるぜ」
「……、もし、万が一戦闘になっても、避けること。これが大前提だ。仮に彼女の妹を殺せなくとも、日が昇る前には帰ってくること。この二つは守ってくれ」
「分かった」
「白城さんとこの蜂須賀も、できればそうして欲しい」
「ああ、そのつもりだ」
「恩にきる。白城さんもありがとうございます」
「構わんさ」
「後、鶴丸の疲労回復は俺がします」
男がそう言うと、白城は少し考え込んでからその役目を男に譲った。
辺りが暗いせいでよく分からないが、それでも尚男の顔色は悪い。
数日間の監禁に加え、碌に食事を摂ることもできず、それなのに霊力は今まででかなり消費している。
先ほども述べたように、限界などとうに超えている。
それでも、せめて。そう思った。
本当は疲労回復用の団子があれば良かったのだが、もう余っていない。
かといって白城の言葉に甘えるのも、男の矜持が許さなかった。