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とうらぶっ☆続

第11章 閑話休題:告白



「でも、好きなの」

憎いと思うのと同じくらい、嫌いだと思うのと同じくらい、私は、あの人が好きだった。

「あの人に一番忘れて欲しくないって思うくらい、好きなの」

本当の名前も、年齢も、なに一つ知らない。
あの人に本当の自分を見せることもなく、偽りだらけの私だったけれど、それだけは本心だった。

あの日、彼が私のために選び送ってくれた香り袋を手にした時の、あの想いは、気持ちは、偽りようのないものだった。偽れないほど、どうしようもなく嬉しかったのだ。

「主は、きみのことを忘れないさ」
「………ほんとうに?」
「本当だ。…主が、きみのことを忘れるわけないだろう。忘れられるわけ、ないだろう」

ぐ、と、私の背に回している腕に力がこもる。
それも一瞬で、次の瞬間には腕は私の背から離れていた。

この鶴丸国永と、あの人が付き合っていたことは知っていた。
それまで一度だって気づかなかったのに、あの人を好きだと思った瞬間に、気づいてしまったのだ。

けれど、そんなあの人のことを好きな鶴丸国永だから、あの人が好きだという鶴丸国永だから、その言葉はただの同情でもなんでもなく、事実なんだと思った。

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