第11章 閑話休題:告白
「きみは、」
やわらかくてやさしい声。
神さまなんていないと思っていた。ひどいものばかりだと思っていた。
でも、私の目の前にいる神さまは、どこまでもやさしい。
そんなものに包まれて、意識がまどろむ。
「主のことが、本当に好きなんだな」
耳元で落とされた言葉に、素直に頷く。と同時におどろく。
きっと、誰にも気づかれていないと思っていた。
「どうして?」
知っているの。
問えば、鶴丸国永は耳元で少し笑った。
「主を見つめるときのきみの瞳が、俺と同じだったからな」
「……なんだ、じゃあ、あなたはずっと知ってたんだ」
まるで凪いだ海のように、心は穏やかだった。
だからか、私は素直に心のうちを吐露する。
「本当は、ずっと憎かった。憎くて憎くてたまらなくて、心底嫌いで、きっとたぶん、私はあの人が世界でいちばん嫌い」
「…………」
ずっと言葉にすることのなかった言葉たちを口にした途端、私の中に浮かび上がったのは、認めたくないと突っぱねて、それでも捨てることもできず、小さな箱にしまい込んだままだったものたち。
私をこれ以上なく苦しめて、幸せにして、傷つけた小さくて大きな想いのかけら。