第2章 審神者見習い
白城は政府からも頼りにされている存在だ。
故に、政府だけでは手に負えない事件や事故が起きたとき、こうして度々駆り出されるのを男は知っていた。
今回もそういう類のものだろう。
それならばこれ以上踏み込むことはしない方がいい。
男がそう判断し、話題を変えるべく口を開くよりも早く、白城が男に耳打ちした。
「それより、お前さん、鶴丸とまぐわっただろう」
「はっ?!」
声を潜めるようにして零された言葉は、男の度肝を抜くものであった。
刀剣男士にならいざ知らず、どうして審神者である白城にそのようなことがバレるのか。
男は顔を赤くさせたまま、もしかしてと首筋あたりを手で押さえた。
「当たりか」
にやり、とまるで面白いものを見つけたように白城が笑う。
男はそれに内心で舌打ちしつつ、手をそっと離した。
「しかも三日以内だな、こりゃあ」
「……なんで分かるんすか」
「なんでって、なぁ。これだけなみなみに鶴丸の神気が注がれちゃあ、気づくだろうよ。お前さんが人で止まれるぎりぎりの神気の量だ」
白城の言葉に、男はここ二日間の鶴丸国永の様子を思い出した。
男が強請っても口にキスをしてくれなかったのは、だからかと合点がいった。
「せいぜい、気をつけることだ」
「大丈夫ですよ、その辺は俺も鶴丸もちゃんと分かってるんで」
「ならいい。…と、おれはここだ」
進めていた足を止め。白城が扉に手をかけるのを見ながら、男は小さく会釈する。
「また手紙でも送るさ、今度はゆっくり呑もう」
「ぜひ」
「山姥切もな」
白城の誘いに山姥切国広が頷くと、白城と蜂須賀虎徹は扉の奥へと姿を消していった。
それを見送った二人も、さっさと目的の部屋へと足を速めた。