第9章 柚の花は白く
燃えて、本来の美しさを損なった浴衣を胸に抱きながら、私は声を上げて泣いた。
香り袋の匂いがする度に、唇をかみしめて必死に耐えた。
会いたい。あいたい。すき。すきになってほしい。
でも、妹に消えて欲しくない。あの人にだって。私だって、消えたくない。
生きたい。
生きて、あの人のそばにいたい。
もう一度、頭を撫でてほしい。
生きたい。
生きたい。
ただ、生きたいだけなのに。
どうしてそんな簡単なことが、私にはできないのだろう。みんなが当たり前に享受している今が、私にはないのだろう。
生きたいと願うことが罪だという。生きようとすることが悪なのだという。
生きることを願うだけで、世界からは敵とみなされ、本当の味方はひとりもいない。
そんなものが、この世界だ。こんな世界だ。
生きることが悪だというなら、いったい何が正しくて善だというのだろう。
そんな正義なら、私はいらない。欲しくない。
敵対するあの人は、私を許してくれるだろうか。
なんでもいい。忘れることだけはしてほしくなかった。