第9章 柚の花は白く
どうして、私は、私たちは正史の中で生きられないのだろう。生きることが許されないのだろう。
ただ、生きたいだけだった。
生きて、ご飯を食べて、眠って。夜が明ければ学校に行って、友達を作って、好きな人のことを想って。
たまの休日は家族でどこかに出かけて、私は妹といつも一緒で。喧嘩もあるけど、最後は私がお姉ちゃんだからね、って仲直りをする。
そんな馬鹿みたいなことを、私はいったい、何度想像したのだろう。
あの人がくれた香り袋。刀剣男士が選び、彼がかわいいと言ってプレゼントしてくれた浴衣。
どれも、嬉しいはずなのに、それ以上に憎らしくてどうしようもできない痛みにのたうち回りそうになる。
目に入ると決意が弱ってしまう気がして、燃やしてしまおうとしても、結局できなかった。
火の中に一度入れてしまったそれを、私は火傷も厭わずに、泣きそうになりながら必死に取り出した。
お陰で両手は火傷だらけ。
それでも、捨てられなかった。
どうしても、手放したくなかった。