第9章 柚の花は白く
笑っちゃうくらい甘くて、優しくて、まるで小さな頃一度食べた、綿あめみたいな人。
私を見つめる瞳が優しくて、まるで疑うことなんて知らない。少し、妹と似た瞳を持った人。
事あるごとに、私の頭を撫でてくれた人。
かわいいね。
よくできました。
柚子ちゃんはすごいなぁ。
その言葉が、頭を撫でる手が、私を肯定している気がして。
久しく忘れていた人の温もりなんてものに触れて、触れてしまって。
もっと欲しいと思ってしまった。
もう少しあの場所にいたいと思ってしまった。
好きだと、そう、思ってしまった。
あの瞬間の絶望を忘れない。
好きだと自覚して仕舞えば想いは募る一方で、初めての好きな人、に、柄にもなくどうしていいか分からなくなってしまったり。
でも、好きだと思えば思うほど、同じくらい苦しくて、身体中いたくて、それはもう、息もできないほど。
だって私は、好きなひとの敵にならなくてはならないのだ。
奪われる痛みを知っている私が、彼から大切ないくつもを奪わなければならないのだ。