第2章 審神者見習い
けれど祖母の死は、男に両親の死を近く感じさせた。
以前、現世に来たときは薬研藤四郎のことやへし切長谷部のこともあってすっかりだったが、男は普通に家族のことを好いているし、恋しくもなる。
いい歳してホームシックになることもしばしばある位だ。
だから、こうして現世に来ることで家族に思いを馳せることは当然のことであり、せめて死に目に立ち合いたいと思うのも当然のことなのかもしれない。
そんな風に明後日の方向へ物事を考えながら歩いていれば、それは当然男を襲った。
「ぎゃっ」
もみっ、と思い切り尻を揉まれて、男は驚きに声を上げる。
「てめっ、いきなり何すんだよ…!」
次にセクハラであろう行為を行った者に対して、男は声を上げ振り返った。
しかし振り返った瞬間、男の怒りバロメーターはたちまち下がる。
興が削がれた、とでも言えばいいのだろうか。
「久しぶりだなぁ、若造」
なぜなら、それは男の知り合いであったからだ。
「白城さん!」
白城――とは、審神者名である。
見た目は50~60といったところか。
髪は白髪混じりのグレーであり、着物を着た姿は貫禄を感じさせる。
実際、この白城は名のある審神者だ。
かなり昔から審神者をやっているらしく、その実力は政府からのお墨付きであった。