第2章 審神者見習い
5
ゲートを抜け着いた先は、政府の中にある一室だった。
男は自身と山姥切国広の身体に異常がないことを確認すると、その部屋を出て広い廊下を歩き始める。
「こっち来んの久しぶりだなー」
「…おい、あまりきょろきょろするな」
「や、だって何か色々変わってるし、気になるじゃん」
男が言い訳がましくそう言えば、山姥切国広は溜息を吐いた。
「変わりもするだろう。こっちじゃ本丸と時間の流れが違う」
「ああ、そっか」
すっかり忘れていた、と心中で思いながら、果たして自分の同級生達はどうなっているのかと思いを馳せる。
男は会社をやめた年からずっと本丸という異空間で過ごしているので、容姿はまだ三十路程度だ。
しかし、こちらでは先ほど山姥切が言ったように時間の流れが違う。
現世は時代の流れがかなり早い。
そう言えば自分についている担当も随分年をとったよな、と今更ながら思う。
両親は元気だろうか。
祖母については訃報がきた。四カ月前のことだ。齢102歳。大往生である。
叶うのなら最後に一目でも見たかったし、礼を言いたかったというのが本音だ。
久しぶりに、人の死というものに触れた気がした。
涙が出なかったのは、きっともう祖母の存在が自分の中で薄れ始めていたから。
薄情と言われればそれまで。