第8章 反撃の烽火
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本丸に足を踏み入れてすぐ、男の身体は地面へと投げ出された。
ずしゃ、と砂利の上を身体がすべる。それは五虎退も同様だった。
男と五虎退を乗せ、傷も厭わず戦場を駆けていた虎は、その身体を地面に横たわらせている。虎の身体が光ると同時、その大きな肢体はいつもの五匹の虎へと戻っていた。
男の気配を察したのか、音を聞きつけやってきたのか、男の前に現れたのは平野藤四郎だった。
「主君…?!」
痛む身体に耐えながら、男は平野藤四郎の声を聞いた。
だが、まだ安堵するには早い。
男は次にすべきことのために、歯を食いしばりこんのすけを呼ぶ。
「こんのすけ!」
男の呼びかけに、その場にはどろんとこんのすけが現れた。
こんのすけが問うより早く、男はこんのすけへと指示を出す。