第8章 反撃の烽火
「五虎退!」
男が五虎退を呼ぶ。しかし、五虎退と男の間に、別の打刀が一振。
五虎退は残りの二振を倒してから、すぐに後ろから打刀へと斬りかかった。
「主さま!」
五虎退が伸ばした手を、男はしっかり掴んでぐっと引き上げる。
虎の上に乗せると、バランスを崩しそうになりながらも、五虎退はなんとか男の後ろへと状態を安定させた。
「ありがとうございます」
「いや」
虎は五虎退が自らの背に乗ったことを確認すると、スピードを更に上げ、ゲートをくぐった。
「くそ、巻けなかったか」
男は後ろを振り返りながら、呟いた。
そこには男の後を追いかける、柚子と数体の歴史修正主義者。
柚子には男の本丸が割れているので、どちらにしよ本丸まで追ってくるとは思っていたが、それでもやはり僅かでも回復する時間は欲しかった。
五虎退は限界を迎えたのか、男の背にぐったりと身体を預ける。
「す、すいません…」
「五虎退のせいじゃないさ。お前は頑張ってくれたよ。ありがとう」
礼を言うと、五虎退は男にしがみついたままそれきり口を閉じた。
もうすぐゲートをくぐり終える。
ゲートの先に、光が見える。本丸への入り口だ。
目が眩むほどの光に瞳を細め、男はゲートを潜り抜けようとしていた。