第8章 反撃の烽火
でも、と、五虎退は続ける。
「でも、主さまは僕のことを、諦めずにいてくれました。……主さまは僕の誇りです。こんな不甲斐ない僕だけど、僕にだって譲れないものはあります」
足音が聞こえる。それも複数だ。
これは、馬が戦場を駆ける音。
「絶対に、主さまを守り通してみせます。僕も、絶対に折れません。大丈夫。主さまがいれば、それだけで、僕はなんだってできてしまうんですよ」
大凡戦場にはにつかしくない穏やかな笑みを浮かべて、五虎退は言った。
戦場でこそ、刀は真価を発揮する。
その意味を、男は目の当たりにした。
足音の正体は、矢張り馬だった。
そこには柚子の姿も見える。
柚子の合図とともに、三体の敵が男たちをめがけて襲ってくる。短刀が二振と、太刀が一振。
避けることもできるが、避けてしまっては男が助からないだろう。
だから五虎退は、短刀の攻撃は諦め、一番攻撃が重い太刀へと目掛けて刀を突き刺した。
飛躍したせいで、男を乗せた虎と五虎退との距離があく。
それでもなお、虎は足を止めなかった。
もう、ゲートは目と鼻の先だ。