第8章 反撃の烽火
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薄暗い洞窟を抜け、男と五虎退はなんとか脱出することができた。
緩まりそうになる足を、五虎退が「まだです」と叱咤する。
そうして足を止めずにどれくらい走り続けたのか。
距離が開いたのは確かだが、歴史修正主義者がふたりを追っていることに違いはなかった。
「主さま」
五虎退が気遣わしげに男を呼ぶ。
ようやく止めることの許された足は、情けないことにがくがくと震え、力がうまく入らない。
「はっ、はっ、」
息は切れて、肩で息をするのがやっとだ。
もう一度走れと言われても、もう走れそうになかった。
「ここからは、虎くんで移動しましょう」
「とらくん、?」
忙しない呼吸の間で問えば、五虎退は力強く頷いた。
どういうことだ、と思っていれば、五虎退は自らの陰に向かって「虎くん」と呼びかける。
するとどうだ。五虎退の陰からは、大きな一匹の虎がぬっと出てきた。
男は驚きのあまり言葉を失う。