第8章 反撃の烽火
「主さま」
五虎退が男を呼ぶ。
男は体を襲う痛みに耐えながら、言いたいことをなんども呑み込んだ。
「………行こう」
空白ののち、ようやく絞り出した声は、情けなくもかすれていた。
たった一言。その一言を言うのに、男はいろんな想いを押し込んだ。
それが分かる五虎退は、その言葉にまた涙が出そうになる。
何故かなんて分からない。
余裕のなさがそうさせるのか、焦りからなのか、恐怖からなのか、はたまた安堵からなのか。
けれど、その一言の重みは知っている。
五虎退は涙を振り払って、静かに頷いた。
出口は、もうすぐそこだ。