第8章 反撃の烽火
走り出してすぐに、男の前に数体の歴史修正主義者を引き連れた柚子が現れた。
そのかんばせは、怒りで赤く染まっている。
「逃すもんか、捕えろ!」
哀しみや憎しみ、まるで全ての負の感情を綯い交ぜにしたような声で、柚子は命を下す。
咄嗟に五虎退が何体かを弾くが、形成は圧倒的に不利。
「五虎退、そのまま大将をつれて突っ切れ!」
「っ?!」
腹の底から、薬研藤四郎が叫ぶ。
血反吐を吐きながら、それでも薬研藤四郎は意地でここまで男を守り通した。
偶然か必然か。
奇跡のようでいて、神様があるがゆえに可能だった時間は終わりを告げようとしている。
五虎退は、驚きながらも振り返らなかった。
聞きたいことも、言いたいこともたくさんあった。
混乱する頭の中で、それでも五虎退には主を守ると言う使命がある。
命をかけて五虎退を助けにきた主を、五虎退は何としてでも連れて帰らなければならない。
一瞬の迷いが命取りになる。
たった数秒が、戦場では致命傷につながる。
今しかなかった。