第8章 反撃の烽火
どこだ。一体どこにある。
男はひたすら走っていた。
薬研藤四郎の足止めが成功しているのか、すぐに敵が追ってくることはなかった。が、油断はできない。
一刻も早く五虎退を見つけ出さなければならない。
先ほどから気配は感じているのに、五虎退を見つけ出すことができない。
どこをいってもコンクリートで作られた壁と床が続いているだけで、一向にどこにもたどり着かないのだ。
敵側から聞き出し、割り出した情報が正しいものならば、この辺りにあるはずなのに。
コンクリート以外にあるものといえば、男が放り込まれていた牢屋と同じような、錆びた鉄でできた牢屋ばかりだ。
時々見かける牢屋には、動物の骨があった。少し先にある牢屋には、人の死体のようなものまである。
おれも、このままーーーー。
最悪の想像が頭をよぎった。
背筋に悪寒が走ったのを、頭を振ることで誤魔化す。が。
「大将!」
薬研藤四郎の叫びにも似た声が響いた。
「くっそ…」
恐怖で足が絡まったのがいけなかった。
派手に転んで、体制を戻す前に敵の気配。
ブン、と空を切る音が響く。