第8章 反撃の烽火
ガッ、と何度目かの金属と金属が擦れる音。牢屋の鍵が壊れた音だった。
「大将急げ」
「分かってる」
男の足では、姿を捉えられたら最後。
すぐに追いつかれ、再び牢屋に引き戻される。
戻されるだけならまだいい。最悪、五虎退や男の命だって危うい。
男は牢屋を出るや否や、鈍っている身体に鞭を打って兎に角走った。
五虎退の場所は何となく把握している。
柚子からそれとなく聞き出していたのもあるが、気配というものを強く感じる。
「見つけた!」
暗くて広い、コンクリートで囲まれた建物の中、柚子の焦りを含んだ声が聞こえた。
まずい。
「薬研!」
「大将はそのまま進め!」
名を呼べば、正しく意図を理解した薬研藤四郎が男をかばうように立つ。すぐそばには歴史修正主義者が二体。
「はは、滾るぜ」
ここを通すわけにはいかない。
久しぶりの戦闘だ。血が騒ぐ。
薬研藤四郎は不敵な笑みを浮かべて、刀を構えた。