第8章 反撃の烽火
「三日月の旦那に借りてる髪飾りがあるだろう」
男は頷いた。
薬研藤四郎が言うには、刀剣男士の身にまとっているものは、総じて刀剣男士のものであり、誰かのものにはなり得ないという。
そして、例え髪飾り一つとて、持ち主の元を離れればその主の元へ戻ろうと不思議な力を発揮する、らしい。
「らしいっていうのは?」
「見たり聞いたりしたわけじゃねぇからな。これは俺たちが何となく感じてることだ。だから、らしい。でも、当てにしてもいい。大凡ではあるが本丸のある方へと引っ張られるらずだ。大雑把だから、出口の方を何となくって感じになるとは思うが」
なるほど。
まさか、こんなところで三日月宗近の髪飾りが役に立つとは思わなかった。
「うまいこと脱出できたら、後は五虎退に従ってくれ。阿津賀志山なら、俺たち刀剣男士の頭の中に地図が叩き込んである」
「わかった」
「それから、俺っちのことは戦力として数えないことだ。正直、俺っちにもいつまで持つのか、どの程度の力があるのか分からん。五虎退を取り戻すまでは意地でも消えんが、それでも長時間の奴らの足止めは厳しいと思う」