第8章 反撃の烽火
それを薬研藤四郎に伝えると、彼はうーんと唸った。
「何て言やいいのかな…。俺っちは頭が良くないから上手いこと説明はできねぇんだが……、………、まっ、とりあえずやってくれ!」
「え、えぇ…」
「うーん、普通はさ、俺ら刀剣男士も歴史修正主義者同様、折れたら何にも残らず消えちまうんだ」
「そうなのか?…あれ?でも、薬研は、」
「そう。俺っちは消えてない。何故かは分からんが。でも、消えてないってことは、まだ刀として完全には死んでないってことでもある」
薬研藤四郎は、男を見据えた。
男はようやく薬研藤四郎の言いたいことを察し、息を呑んだ。
偶然か、それとも必然か。薬研藤四郎は消えなかった。
それはある意味奇跡的なことであり、男は何故かこの瞬間、彼らが神であることを鮮烈に感じた。
そしてまた、自らの存在が神に愛されている身であることを知り得た。
「ある程度霊力が溜まれば、一時ではあるが、俺っちは顕現することが可能だ」
「ほ、ほんとうに…?」
「ああ。嘘はつかない。信じてくれ、大将」
疑うまでもない。
しかし、あまりに実感の湧かない話であった。
「大将」
薬研藤四郎が呼びかける。
幾度も聞いた呼びかけだ。
……ああ、信じる。信じるとも。
男は力強く頷いた。
「ありがとう。恩に着る」
「礼をいうのは俺の方だ」
「いや、言わせてくれ。主から疑いのない信用や信頼を受けるってのは、大将が思うより何倍も尊くて嬉しいもんなんだ」
「そう、なのか?」
「そうだ。…話を戻そう。作戦の続きだ」