第8章 反撃の烽火
36
薬研藤四郎が考えた策は、こうだった。
「大将、俺っちのこと、持ってきてるか?」
「ああ。青江に言われて、全部持ってきた」
「さすが青江の旦那だな。まさか、お見通しだったんじゃねぇだろうな」
ふふん、薬研藤四郎は笑った。
「これから大将には何日かかけてやってもらいたいことがある」
「やってもらいたいこと?」
「おう。俺っちの本体に、霊力を少しずつ込めてほしい」
「霊力を…」
「ただし、少しずつだ。一遍にやっちまうと、奴さんに気づかれちまうからな」
「いや、それは構わないんだけど、」
「なんだ?」
男は表情を陰らせた。
霊力を流す。それは刀剣の手入れの際にも行う作業だ。
しかし男は一度、折れた薬研藤四郎を前にその過程を試している。
結果は、ただ男の霊力が垂れ流しになるだけだった。
その霊力が薬研藤四郎に馴染むことはなく、折れてしまった本体は傷一つ治ることなかった。