第7章 相まみえる
ぽんぽん、と男の背中をさする。
ず、と鼻をすする音が聞こえた。
「ちゃんと、」
「………」
「ちゃんと、伝わってるから。大将に大事にされてたって、今でもされてるって、ちゃんと、解ってるから」
「うん…」
「さっきも言ったけどさ、俺っちは、幸せだった。今も、だな。そこに嘘は、なんもねぇんだ」
「うん……」
「…………」
「…やげん、」
「ん?」
「気づいてやれなくて、ごめんな」
「そういうのは、なしだぜ」
風が吹いた、気がした。
あの日置き去りにしていた後悔が、少しずつ溶けていくような感覚。
ずっとずっと、心につっかえていた何かが、ようやくなくなった。
代わりに、暖かいものが男と薬研藤四郎の心を包み込んだ。