第7章 相まみえる
しかしいつまでも余韻に浸っているわけにもいかない。
薬研藤四郎は男の背をパッと離し、男の涙を拭ってやった後で真剣味を帯びた瞳と声で切り出した。
「さて、大将。あんたには今、やらなきゃなんねーことがある。違うか?」
その問いに、男は力強く頷く。
今やるべきこと。それは、五虎退を取り戻し本丸へと無事に帰ることだ。
男のそばで様子を見ていたという薬研藤四郎は、事の成り行きも細かに把握しているようだった。
「五虎退を取り戻して、みんなんとこに帰んねぇと」
「そうだ。その為に作戦を立てよう」
「さくせん?」
「大将のことだ、あんま深く考えずにやっこさんとこ乗り込んだんだろう」
「うっ…」
「何とかなるって、大将のいいとこでもあるが、悪いとこでもあるぞ。ま、小言はこんくらいにして」
にやり。瞳をぎらつかせて笑う薬研藤四郎は、得意げに言った。
「俺っちに考えがある」