第7章 相まみえる
「けれど、刀が増えていくにつれて、夢は見なくなった。だから、自分でも忘れちまってたんだよなぁ。それがまたいつからか、夢を見るようになった。今度は炎に焼かれる夢じゃない。薬研藤四郎が存在しない世界に、自分が放り出される夢だった」
その言葉に、男は息を呑んだ。
純粋に、嫌だと思った。想像してしまった自分も、そんな世界を夢でだって見ていた薬研藤四郎のことも。
夢は深層心理を映し出す鏡でもある。
「始めは何ともなかった。俺っちは繊細そうな見た目とか言われるけど、案外図太いからなぁ」
はは、と薬研藤四郎は笑ってみせる。
「でも、何度も見るんだ。何度も見ているうちに、俺っちは自分でも気づかないくらい、少しずつ、けれど確実に、心が弱っていった。突き付けられるんだ。お前はこの世に存在していない。ぜんぶ、ぜんぶ、炎の中で見た蜃気楼なんだって、誰かが耳元で囁くんだ。…皮肉なことに、俺っちとおんなじ声でな」