第7章 相まみえる
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「初めて夢を見たのは、顕現してすぐの頃だ。まだ、山姥切の旦那とふたりの時だな。身体中を炎で焼かれる夢だった」
「炎で焼かれる夢…」
「ああ。あんまりにも夢見が悪いから、情けねぇことに寝れなくなって、駄目元で山姥切の旦那の隣で眠ることにした。誰かのそばで寝てる時は、不思議と平気だったんだ」
そうだったのか、と心中で呟く。そんな事実を知ったのは、初めてだった。
薬研藤四郎が付け足す。
「…あ、山姥切の旦那を責めてやるなよ。俺っちが頼んだんだ。大将には言わんでくれって。あの時はまだ、大将も審神者に慣れてなくて、俺っちもそんなあんたを信じきれてなかったから、暫くは様子見をすることにしてた」
薬研藤四郎の言うことは最もだ。
そんなことで山姥切を責めるつもりはないが、思い当たる節があった。
薬研藤四郎が折れてしまって数日、ふさぎ込んでいた男にぶつかってきた山姥切国広の後悔に歪めた顔を、男は覚えていた。
今更ながらに思い知る。
自分一人が後悔していたわけではないのだと。