第7章 相まみえる
「!」
そしてその肩が、抱きしめる手が、吐き出す息が。
震えているのに気づいてしまっては、薬研藤四郎はなにも言えなくなる。
「ごめん、薬研。ごめんなぁ」
吐き出されるように降ってきた謝罪が、薬研藤四郎の耳に響く。
鼓膜を揺する声がどこまでも悲しくて、苦しくて、とびきりに愛おしくて。
かすかに感じる濡れた感触に、薬研藤四郎は堪らなくなって、震える口を開いた。
「…俺っちも、悪かった」
男は泣いた。
薬研藤四郎を抱きしめたまま、その存在を何度も確かめるみたいに、なぞるみたいにして、身体に触れながら。
声を上げてまるで子どものように泣いた。
それにつられるようにして、薬研藤四郎もまた、声を殺して男の肩に顔を押しつけながら泣いたのだった。