第7章 相まみえる
「うぇえ?!なに、なになに」
与えられる過度な情報に、頭が追いつかない。
じゃない。
薬研だ。薬研。あの声は、確かに薬研だった。
「やげん、やげんってば」
どこだ?どこにいんだよ。いるんだろ。たのむから、姿を見せてくれよ。それとも、俺の幻聴だった?
やげん。薬研。俺の薬研。
「たーいしょ」
「ぅわっ」
泣きべそをかきそうになりながら探していれば、それは突然姿を現した。
男の目の前にいつもの戦闘服で現れたのは、確かに男が会いたくて止まなかった、男の本丸にいた薬研藤四郎だ。
「やげん!」
男は堪らず、薬研藤四郎の小さな身体をきつくきつく抱きしめた。
「やげん、やげん、やげん。俺の、たいせつな、薬研」
一向に力の緩まる気配のない男の抱擁は、ぎゅーぎゅーと薬研藤四郎の身体を締め上げる勢いだ。
薬研藤四郎は耐えきれずに吹き出した。
「ぶっ、あははは、大将、変わりねーなぁ。そんなすぐにいなくなったりしねぇから、力緩めてくれや。流石に、苦しい」
薬研藤四郎は男の背中をぽんぽんと、まるで小さな子にするかのようにあやす。
それでも、男の力は緩まるばかりか強まる一方だ。
困ったなこりゃ。
思いながらも、薬研藤四郎だって満更でもないのだからどうしようもない。
薬研を抱きしめる自分より一回り以上も大きな男の身体は、しかしどうしてか頼りなく小さく思えた。