第7章 相まみえる
ガキィ、と刃が受け止められる音。
受け止めていたのは、一体の龍だった。
「えっ、」
男は驚きに目を見開く。
どういうことだ。何が起こってる?
理解が追いつかないまま、歴史修正主義者の刀は折れる。
折れる、というよりは、浄化されたように見えた。
消えかかる歴史修正主義者は、最後のあがきだとでも言うように、男の鳩尾に思い切り拳をいれた。
「がはっ!」
意識が一瞬で遠のく。視界が白くなる。
息ができなくて、あまりの苦しさにもがいた。
吸い込むことも吐き出すこともできないまま、男の意識は再び深い闇の中へと放り込まれる。
直前に、思い出す。
ああ、倶利伽羅か。
俺を守ってくれた龍は、確かに大倶利伽羅の腕にあった倶利伽羅龍だった。
ありがとう。
一度使って仕舞えばもう本体に戻るしかないであろう龍は、すでに消えてしまった。
このまま、今度こそ本当に殺されるのかもしれない。
それは困るなぁ。
暢気な思考は、段々と下降していく。
俺を待ってくれてる子がいるんだ。帰りたい場所があるんだ。 でも、もう、むり、なのかも。
ここには、もう誰もいない。俺を守ってくれる人は、ここにいない。
叱咤してくれる相棒も、励ましてくれる優しい恋人も、誰もいないんだ。
五虎退。五虎退、ごめん。ごめんなぁ。
お前を一人ぼっちで、こんなとこに放っておきたくなくて、皆んなの反対を無視して半ば騙すようにして出てきたのに、この有様だ。
本当にごめんな。