第7章 相まみえる
「本当の絶望も知らない、なんでももってるあなかなんかには分からない…っ!私が望んでるものなんて、救いたいものなんて!」
涙交じりに上げられた声のまま、柚子は詠唱を開始する。
聞いたことのないその詠唱は、けれど柚子の陰から出現した気配によりすぐに察知できた。
歴史修正主義者だ。
肌を刺す殺気と、禍々しいオーラ。
男は怯みそうになりながら、なんとか柚子へと語りかける。
「きみの望みがどんなものであっても、俺は、あの居場所を奪われることだけは許せない。なぁ、他に方法があるはずだろ。俺も一緒に探すから、こんなことからは手を引くんだ」
「だからっ、何も知らないくせに知った風に言わないで!あなたのそういうとこ、本当に大っ嫌いだった!憎くてたまらなかった!」
まるで柚子の悲痛な叫びが合図であるかのように、一体の歴史修正主義者が男に襲いかかる。
どういう仕組みなのか、歴史修正主義者は鉄の柵をすり抜け、その穢れに満ちた刀身を男に振りかざす。
男は反応することもできず、ただ刀の切っ先を見つめることしかできなかった。
殺される。
思った矢先、男の背後から現れる影があった。