第7章 相まみえる
「約束通り、五虎退は返します。でも、それは今じゃない。あなたの本丸がなくなるまで、ここでおとなしく待ってて。…あなたが何もしなければ、あなたのことは生かしてあげるから」
一種の懇願のようにも思えるそれに、男はただ呆然としてしまう。
口を突いて出たのは、ずっと気になっていたことだった。
「柚子ちゃん、きみは、何が目的?」
「…それは、」
「俺には言えないこと?」
男の問いに、柚子は感情的になることも、憤ることもなく、ただなにかを迷うように目を伏せた。
「…きみは、俺の本丸がなくなるまでって言ったね」
「そうよ」
「それはつまり、きみが、というよりは君たちが、かな。俺の本丸を潰そうとしてるって解釈であってる?」
一つずつを確認するように柚子に問えば、柚子は素直にも頷く。
「そっか。なら、俺はなんとしてでもここを出て行かなきゃならない。もちろん、五虎退と一緒にだ」
「……そんなこと、させない」
「でも、きみは迷ってるじゃないか。迷ってるうちは、きみの望みは叶わないよ」
「…うるさい、あなたに、……っ、」
「五虎退を返してくれ」
「あなたなんかに、そんなこと言われなくても分かってる!」
淡々と言葉を紡ぐ男に、柚子はついに感情のままに声を荒げた。