第7章 相まみえる
「目が覚めた?」
聞き覚えのあるものよりは、幾らか冷たくて低い声。
反射的にばっと顔を上げると、そこには柚子がいた。
「柚子ちゃん…」
男が彼女の名前を呟けば、柚子は嘲るように笑って、男を見下した。
「柚子ちゃんだなんてやめて。甘くってヘドが出そう」
「………」
「……、本当に来るなんて、バカじゃないの」
「来いって言ったのは、君だろう」
「それでも、来るなんて思わなかった」
柚子のつぶやきに、男は思わず言葉を失う。
まるで、来ることを望んでいなかったみたいだ。
この少女が分からない。
なぜ、そんなに苦しそうな顔をするのか。迷い子のような顔をするのか。
ふと、頭の中をよぎる記憶があった。
彼女が見習いとして、本丸にいた日々のことだ。
あの中にいる彼女は、すべて偽りだったのだろうか。
そうじゃないと思うのは、男の願望にしか過ぎないのだろうか。甘さ故なのだろうか。
「きみは…」
思わず、男は柚子へと声をかけた。
一瞬の戸惑いのうちに、柚子は男の言葉を遮る。