第7章 相まみえる
意識をそらすために、再び思考の海に沈む。
ここが敵の陣地であることは間違いないだろう。
敵の、というより、彼女の。
起きた時から気配を探ってはいるが、少なくとも男が感知できる範囲には誰もいないようだ。
彼女ー見習い審神者だと思っていた少女、柚子が、実は歴史修正主義者だっただなんて思いもしなかった。
何故彼女のような少女が敵側にいるのだろうか。
彼女は五虎退を連れ出す時に言っていた。
もう私には時間がない、と。
あれは一体どういう意味だったのだろうか。
なぜ、俺だったのだろう。俺の本丸だったのだろうか。
理由もなく俺だったとは思えない。
なぜ。なにが。どうして。
ああ分からないことばかりだ。
それよりも、五虎退はちゃんと無事だろうか。ひとりで泣いてはいないだろうか。
せめて、無事を確認したい。
どうすることもできず、思考ばかりがぐるぐると回る。
考えていないと、落ち着かない。考えることをやめた時、全てが終わってしまう気がしてならない。
そうしてずっと思考の海に潜っていたから、気づかなかった。すぐそばに近づいてきていた気配に。