第6章 閑話休題:大倶利伽羅
「私なら、訳も聞かずに乱をただ叱咤していたでしょう。なにを考えてるんだ、お前は刀としての自覚があるのか、と。ただ、あの子を責めてしまっていた」
「…仕方がない。あんたと乱では、五虎退と過ごしてきた年月が違う」
「ええ、分かっています。それでも、ひとりの兄として、ただただ情けないのです」
一期一振の言葉に、大倶利伽羅はため息を吐いた。
「あんたは、刀だ。人の兄を真似る必要はない」
「…そう、でしょうか」
「人の世であったなら、どうかは知らんがな。あんたは、ただ刀として主を優先したにすぎない。それを間違いだったと悔やむ必要も、情けなく思う必要もない」
「大倶利伽羅殿…」
ここにいる刀は、誰も彼も優しすぎるのだ。
考え込んでしまうところは、主に似たのかもしれない。
「……ただ、刀であった頃に戻りたい。そう思う私を、薄情だと笑いますか?」
不意に問われた言葉に、大倶利伽羅は一瞬呼吸を忘れる。
その思いには、覚えがあった。