第6章 閑話休題:大倶利伽羅
「大倶利伽羅は、優しいね」
「……思ったことを言っただけだ」
それに、そんな風に思うのは大倶利伽羅ばかりではないはずだ。
「それが、優しいんだよ。…そういえば、三日月さんの髪飾りもなくなってたね」
乱藤四郎は、彼の天下五剣の姿を思い出しながら言った。
大倶利伽羅はそのことに少なからず驚いた。
この短刀は、本当に周りをよく見ている。
「倶利伽羅龍も、三日月さんの髪飾りも、きっと主のそばにあるんでしょう?」
大人っぽい笑みを携えながら、確信めいて言うその姿は、先程の涙を堪える姿とはかけ離れていた。
「あぁ」
「ふふ、そっかぁ。なら、主さんはひとりじゃないんだね」
一人で戦ってるわけじゃ、ないんだね。
安心したような、それでも拭いきれない不安を隠すような声だった。
なにを思って考えているのか、大倶利伽羅に全てが分かるわけではない。
けれど、長くをともにした仲間だ。なんとなくは、分かる。
大倶利伽羅はただだまって、乱藤四郎の頭を不器用に撫でた。
俯いた小さな頭。閉じられた青空を写したような美しい瞳は、今は一体どんな姿をしているのだろう。
わずかに視界に映る噛み締められた唇には、見ないふりをした。