第6章 閑話休題:大倶利伽羅
「オレは、お前が間違いだとは思わない」
大倶利伽羅は、慰めなどではなく本心からそう言った。
「なにが一番正しいかなんて、誰にも分からない」
いつだって、正解なんてものは用意されていない。
それでも迫られる選択はあるし、どうしたって善悪をつけたがる連中はいる。
そんなことを気にしていてはきりがない。
「お前が兄弟を大切に思ったから、短刀であることが失格なんてあるわけないだろ」
今回囚われたのが五虎退ではなく燭台切光忠なら、今はまだ見ぬ短刀である太鼓鐘貞宗なら。
自分はどうだっただろうか。
救う術が主に頼るしかないのならば、頼らずにいられるだろうか。
答えは出ない。きっと、本当にそうならなければ選択なんてできない。
だから所詮、大倶利伽羅の言葉は本当には真実味を帯びることはないのかもしれないけれど、それでも、大倶利伽羅なりに考えることはあるわけで。