第6章 閑話休題:大倶利伽羅
「ボクなんだ」
縁側に腰掛け、足をぷらぷら遊ばせながら、乱藤四郎はまるで秘密を打ち明けるようにそっと言った。
「主さんに、ごこを助けてって言ったの」
大倶利伽羅は、何も言わずにただ耳を傾けた。
「ボクが、ごこを助けてって」
遊ばせていた足を今度は抱え込んで、手でつま先をいじりながら、乱藤四郎は静かに言う。
瞳は、ちかちかと光っていた。
「言わなきゃ良かったのかな」
ボクは、
「間違ってたのかなぁ」
言葉尻が、わずかに震えていた。
気丈であろうとする姿は、好ましかった。
「何故、間違っていたと思う」
大倶利伽羅も、その場に相応しい静かな声で問うた。
「うーん…、なんでだろ」
「後悔、してるのか。助けを乞うたこと」
「それは、うん、少し。少しだけどね。例えば、ボクがごこを助けて、じゃなくて、主さんだけでも帰ってきてねって言えばよかったなぁって。そうは思うよ」
「………」