第6章 閑話休題:大倶利伽羅
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「ねぇ、倶利伽羅龍どうしたの?」
夕餉を終え、湯浴みを終えた大倶利伽羅の背に声をかけたのは、乱藤四郎だった。
大倶利伽羅は自分の腕を一瞥してから、さあな、と返した。
返答がどうやら気に入らなかったらしい。乱藤四郎はぷぅと頬を膨らませてから、大倶利伽羅の腕をがっしりと掴んだ。
「答えて」
「めんどくさい」
「ねぇってば」
「…………」
だんまりを決め込む大倶利伽羅を、乱藤四郎はきっと睨む。
数秒後。諦めたようにはぁ、と息を吐くと、掴んだままだった腕を引っ張って、誰もいない縁側へと大倶利伽羅を連れて行った。
「おい、」
「あのね、」
大倶利伽羅の呼びかけを無視して、乱藤四郎は話を切り出した。
こういうところ、この兄弟は似ていると思う。なんだかんだ頑固で、こうと決めれば絶対に曲げない。
乱藤四郎に薬研藤四郎の影を見つけて、大倶利伽羅は大人しく黙って話を聞くことを選択した。