第6章 閑話休題:大倶利伽羅
「そういえば、」
ふと、気づいたように切り出したのは鯰尾藤四郎だった。
「三日月さんどこ行ったんですかね?」
その言葉に、何振りかが思い出したように声を漏らした。
「三日月なら、」
鯰尾藤四郎に返そうと口を開いたのは、骨喰藤四郎である。三日月なら、さっき縁側に。言おうとしたところで、再び襖が開いた。
ぐぅ〜〜と、なんとも情けない腹の虫の鳴き声とともに登場したのは、噂の的である三日月宗近だった。
どっと、全員の肩から力が抜けた瞬間でもある。
「歌仙や〜、俺は腹が減ったぞ」
ふにゃふにゃに力の抜けた声で、顔で、歌仙に食べ物を強請る三日月宗近に、歌仙は盛大にため息を吐き出した。
なんだか、一気に気が抜けた。
空気が読めないのか、わざと読まなかったのか。
シリアスな場面から一転、場は一気に締まりのないものになった。
「あー、もう、分かった。分かったから。そうだね、たしかにもう昼餉の時間もとうに過ぎてる。取り敢えず、何か用意しよう」
「うむ、俺は蕎麦が食べたいなぁ」
「蕎麦、蕎麦か…、あったかな」
「あ、それならちょうど台所の上の棚にあったと思います」
「そうか。ありがとう、堀川。ついでに手伝ってくれるかい?」
「ボクも手伝うよ、歌仙くん」
「助かるよ、燭台切」
テキパキと、台所を仕切る三振りが動き出せば、他のものたちも立ち上がり手伝うためにと動き出した。
大倶利伽羅は細く長い息を吐き出して、ただどうも気にかかる三振りの顔ぶれを思い浮かべて、その場を後にしたのだった。