第6章 閑話休題:大倶利伽羅
「…ていうか、それ、知ってたのって」
静かな声に憤りを忍ばせて言ったのは、燭台切光忠である。
「知らされてたのって、和泉守くんだけじゃないよね?」
確信をもった問いかけだ。
射抜くように金色に光る瞳が、この場にいる刀たちを順番に見つめる。
「光忠、やめろ」
思わず、大倶利伽羅は制止の言葉をかける。
まずい。本能的に感じ取ったそれは、もうすでに手遅れなのかもしれない。
「ああ、大倶利伽羅もか」
その言葉には嘲りが含まれていた。
普段の温厚な姿からはあまりにかけ離れたそれに、言葉を失う。
「ぼ、ボク、山姥切さん呼んでくる…!」
どうにも拙い方向へ動き出した空気に、乱藤四郎が慌ててそう言った。
大倶利伽羅は頷き返すと、再びぐるりと広間を見渡す。
この場にいないのは、山姥切国広と鶴丸国永、それから三日月宗近のみ。他は全員いた。
厄介なことになった。
主は、こうなることを想定していたのだろうか。いや、していたとして、男の意志が揺るがないのは分かっている。…ままならないな。