第6章 閑話休題:大倶利伽羅
いつだか、鶴丸国永が言っていた。審神者はいい主であると。
その言葉を聞いた時、大倶利伽羅の胸を占めたのは誇りと優越感だった。
二つの感情は、今でも大倶利伽羅の胸の中に存在している。
だって、あんた、知らないだろう。あの頃のあの人を知っているのは、俺たちだけだ。これは誰にも譲れない。誰にも話したくない。俺たち数振りだけが知っている、主のすがただ。
喧嘩など数えきれないほどした。一体何度ぶつかりあったのだろう。けれど、その度、男は彼らを諦めなかった。大倶利伽羅の、ここにいる刀剣男士たちの主であることを諦めはしなかった。いつも、いつも。
その真摯さに惹かれた。がむしゃらなまでの姿に目が離せなくなった。いつしか男の側が心地いいと感じるようになった。諦めないでいてくれることが、大倶利伽羅のこころを掴んだ。わかろうとしてくれた。わかろうとしてくれる。
だから、応えようとした。応えた。知ろうとした。わかろうとした。大切にしたいと思ってしまった。この場所を、心地よさを失いたくないと思ってしまった。
嫌いになんてなれるはずがない。
大倶利伽羅は、確かに、男を主と認めていた。