第6章 閑話休題:大倶利伽羅
「俺たちが戦を辞めた時、刀を握れなくなった時、それは折れることよりも遥かに死を意味する」
あるいは、主から見捨てられた時、武器として扱われなくなった時。それは刀剣としての死である。折れることよりよほど辛く惨めだ。
「どうしてそれが分からない。なぜ分からないあんたなんかが主なんだ」
自分より遥かに下にある男の頭を見下ろす。
立てばそれほど変わらない身長は、けれど体格差のせいかどうしたって小柄に見えた。床に腰掛けている状態なら、心持ちも相まって余計に小さく思えるのは必然だった。
膝の上で握りしめる拳が見える。拳が震え、男の唇が戦慄いた。
「俺だって、……」
何かを言いかけ、途中で言葉を飲み込んだ男に大倶利伽羅が視線で先を促す。
察してやれるほど、大倶利伽羅は審神者のことを理解していなかったし、理解したいとも思わなかった。
「…俺だって、一生懸命やってる」
数秒おいて男が口にしたのは、まるで子供のような言い訳だった。
そしてそれは、その言葉は大倶利伽羅の苛立ちを助長する。
「一生懸命やればいいってものでもないだろう。…話し合うだけ無駄だったか。もう、いい」
まるでこれで終いだとでも言うような言葉に、男は焦る。焦って、ただ、ここで終わってはだめだとそれだけは強く感じたのか、男は立ち上がって大倶利伽羅の手首をつかんだ。