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とうらぶっ☆続

第6章 閑話休題:大倶利伽羅



目を瞑れば簡単に思い出せる。
まだ、大倶利伽羅が顕現したばかりの頃のこと。

四振り目として男の本丸に顕現した大倶利伽羅は、男の能力のなさにがっかりしたのを覚えている。
以前の主があの政宗公だっただけに、男はどうしたって劣って見えたし、実際劣っていた。
刀の使い方なんてもってのほか、男は戦の知識に関しても、歴史に関してもからっきしだった。
大倶利伽羅はそんな男にいらついていたし、男もまた、ままならない、あまりに特殊なこの仕事にいらついていた。

きっとこの男を主と認める日は来ないのだろう。

半ば諦めにもにた気持ちで、大倶利伽羅は日々を過ごしていた。

そんな大倶利伽羅が男を主と認めたのは、ある出陣がきっかけだった。

ある日のこと。
いつも通り、四振りでの出陣。ただ違ったのは、初めて重傷者がでたことだ。
そしてその重傷者というのが大倶利伽羅であった。
左腕を持っていかれ、身体は切り傷だらけ。頬さえ、ぱっくりと身が切れていた。
それでも何とか二本の足で立って帰ってきた。止血は済んでいる。顔色は悪かったが、痛みを表情に出すことは一切なかった。

仕方のないことだと思う。当然のことだと思う。
自分は武器で、与えられた使命は敵を倒すこと。無傷でいられるはずがないし、そんなことで敵を恐れたりなんかしない。
大倶利伽羅にとってこの怪我は仕方のないことで、戦場に立つものとしては当たり前で、怪我を負ってなお、戦ができることが誇りであった。存在意義であった。
まして自分は人間とは違う。手入れを受ければ、傷一つない元の身体に戻るのだ。

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