第5章 瑟瑟と
襖の閉まる音が聞こえる。
しばらくして、やがて部屋の前にあった男の気配は消えていった。
つい今しがた狸寝入りをしていた鶴丸国永は、胸を傷めるようなどうしようもない思いを消化する術も知らなくて、ただシーツを握った。
いろんな感情がこみ上げてくる。
知っていたさ、きみが行ってしまうことくらい。愛情深いひとだから、優しいひとだから、それは時に俺たちにとって酷く残酷で理解しがたい。
でも、ああ、俺もどうしようもない。
そんな主を、きみを、望み、愛したのだから。
「くそったれ…っ」
ただただ、やるせなさに鶴丸国永は言葉を吐いた。